2014年8月29日金曜日

魔法科LZ 第5回: 今度こそ美しい夜を、それは幻ではない


 魔法科高校の劣等生 LOST ZERO(以降、魔法科LZ)、制作ブログもすでに5回目。今回は第3回からの続きで、プレゼンリトライのへの話になります。

 まずは、再起に向けて作戦会議から。提出したプロトタイプで問題と思える箇所を再検討した結果は第3回のブログにも書いたように下記の2つ。

  • 操作対象をタッチして操作したいのに、3Dキャラではなくアイコンを押す事
    理由:プレイヤーは画面で動いているキャラクターを押したい!
  • タッチしてから結果が出るまでに時間がかかる事
    理由:プレイヤーはすぐに反応がほしい

 つまり、バトルの操作も結果もわかりにくい代物になっていたのです… orz

 失敗は成功の母。 失敗の原因がわかれば克服すればいいのです。では、この問題をどう克服するのかという事を焦点に話し合いを進めました。そこで、3Dを用いた演出から頭を切り換えれずにいた自分たちに、スクエニのプロデューサから思いもかけないコメントが飛び出したのです。

「2Dのバトルって、わかりやすいですよね。たとえば艦これとか。」

 えっ!?となりました。これまで演出優先で3Dは必須だとかんがえていたのですが、しかし、わかりやすさという一点において、2Dだと攻撃する方もされる方も小さい画面でも把握しやすく、圧倒的にわかりやすいのは事実です!3D的な派手な演出もちゃんとプレイヤーさんに伝わらないのであれば、意味がない。いまの魔法科アプリに欠けている事は3Dへのこだわりというよりも、こういう事なんじゃないのか?という例を出してくれたのでした。

 あわせて、このバトル演出を2D的な固定カメラ表現に変更する事で、2D キャラはアイコンとしても機能しますから、カメラが頻繁に変更される3D表現では無理だった「操作したいキャラクターを直接タッチして操作する」という、当たり前だけれど、これまで出来なかった事が可能になります。コペルニクス的転回というのは、こういうことを言うのかもしれません。ここから、バトルシーンの思い切った大変更につながっていきました!

 …が、しかし、この段階でも不安要素はもちろんありました。その最たるものとしては

  • せっかくのバトルが地味で、迫力がなくなるのでは?
  • 既存のアプリと画面が似てくる。差別化できないのでは?

 というものです。まず「迫力がなくなる」という点についてはこれまで作ってきたカットインシーンや 3D モデルをバトルの間に差し込んで演出していくこと、そして魔法のエフェクト表現次第でカバーできるだろうと早い段階で見積もることが出来ました。なんとかできそうです。一方、「既存のアプリと画面が似てくる」という方は本質的な点で変えることがむずかしい問題です。小さい画面にタッチできるキャラクターをわかりやすく配置するとなるとどうしてもキャラはSDキャラ化してしまいまいますし、そのような表現手法がすでに他のメジャーなアプリで一般化していたからです。わかりやすさは維持しつつも、魔法科LZ のメインコンテンツともいうべきバトルで他のアプリとの差別化はとても大切であり、なんとか確保しなくてはいけない点でした。ここでさらに、なんとかするべくアートディレクターと相談をかさねます。いろんな画面案を出してもらいながら魔法科のバトルに最も向いていて、しかも他のアプリと差別化できるような表現方法を試していくことになったのです。カードを直接並べてみたり、3DのSDキャラをならべたり、アイコンっぽいものをならべたりといろんなアイデアがでて、実際にサンプルも作ってみたりしてみました。そして、そんななかで一番、おおっ!と思えた表現は、「ミニパト」的なキャラクター表現だったのです ↓


 要は、紙に書いたようなキャラクターが切りぬかれつつも、3Dのシーンに表示されているという、現在(最終的な)魔法科LZのバトルシーンの表現です。しかし、これで解決ではありませんでした。当たり前ですが、その「絵に描いた」キャラクターを描く必要があります。しかもできるだけ可愛く…

 この難題の解決のため、さらに助っ人を求めることにしました。自分が知る限り、もっとも可愛いSDのちびキャラを描くことが出来るイラストレーター「タカムラマサヤ」先生に依頼すればよいのではっ!と思いついたのです。幸いにも、ちょっぴりですが、タカムラ先生とは別の仕事でご一緒したことがあり、面識がありました。藁にもすがる思いで魔法科のちびキャラの作画を依頼してみたところ、快諾してもらえたのです!そしてその 結果は皆さんもすでに見ているとおり、タカムラ先生にすっごくかわいいちびキャラを描いていただけましたた(^^) しかもこれには後日談もあり、あまりに出来がよかったので、ゲームからとびだしてグッズもでる事になったほどです!

 こうして、最終的な形状に近いバトル画面ができあがってったのですが、偶然にも世の中のゲームと全く逆の個性的な構造になっていました。なにが逆なのか?というと

 一般的なゲームの場合 : ちびキャラが3D。必殺技等で2Dの大きなキャラが登場
 今回の魔法科LZの場合: ちびキャラが2D。必殺技等で3Dの大きなキャラが登場

 という点です。最初からこういう風にやろうと考えてしまっていたら、この手法はとらなかったと思うのですが、結果から見てみてると、他のゲームも差別化できるし、結果オーライともいえる逆張りです!こうして、タカムラマサヤ先生の強力な協力を得て、魔法科LZ のバトルシーンは完成に近づいていきました。

 しかし、まだこれだけではプレゼンリトライには不十分といか、ビジュアル的な表現手法は解決されたのですが、操作に関するフィードバックについての課題が残っていたのです…


つづく

2014年8月26日火曜日

魔法科LZ 第4回:めざせ!一番!!

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 魔法科高校の劣等生 LOST ZERO(以降、魔法科LZ)の制作ブログですが、今回は前回である第3回の続きからちょっとだけ脇道にそれさせていただいて映像表現の話をしようと思います。

 この魔法科LZ の仕事を受けることになり、ゲームの映像をどうしていこうかと話していく中でアートディレクターとミーティングする度に出た言葉があります。それはズバリ、

 「アニメに勝ちたい…!」

 という野望です。そもそも原作のアニメ化と連動する形で始まった魔法科LZのゲーム企画であったので、アニメのビジュアルとゲームのビジュアルが比較されるのはまず間違いないことでした。そして、自分たちのゲームのビジュアルで魔法科のアニメと勝負したい、勝ちたいと考えたのです。

 とはいえ、映像表現でアニメーションに勝つといってもそう簡単ではありません。というか無理でしょう。ただ、100戦して100勝する必要はないと思っていました。なにか、ここぞ!という勝負できるような部分、負けていないと思える部分を確保したかったのです。スマフォゲームがアニメーションに映像表現で勝つという無謀な目標のため、ひとつずつ、映像表現のレベルアップを積み上げていくことになったのです。

 最初に取り組んだのはモデルです。これがゲームの映像表現の基本であるのは間違いありません。そしてキレイに作るだけではだめだと考えていました。キレイなだけでよいなら、2D の静止画をだせばいいのです。それなら簡単です。しかし、アニメに勝つためにどうしても高い演技レベルを維持した3Dアニメーションを確保したかったのですね。そのため、まだ日本のスマフォゲームではほとんど取り入れられてなかったモーフィングによる表情表現を取り入れたいと思いました。モーフィング自体はそんなに最新テクノロジでも何でもない技術なのですが、スマフォのゲームで取り入れているゲームは現在でもほとんどありません。

 もっとも、モーフィングを使わなくても表情を変えることは可能です。一番ポピュラーな方法はテクスチャーを変更してしまうこと。現在のほとんどのゲームがこの手法で表情を変化させています。まばたきに対応した目のテクスチャ、笑ったり、怒ったりしたときの口の形のテクスチャ等、いろんなテクスチャを用意して、それらを切り替えて表情を表現するのです。これは、これまでウチで制作してきたトロのモデルなどもそのような手法で表情表現していました。そうなんですニャ。これはトロだと問題ならない(というかかわいい)のですが、立体的な顔をもつキャラクターの場合、大胆なカメラワークを用いる様な演出を行うと、目や口が平面である事が露呈してしまいます。これでは、アニメに勝つどころか、映像としてかっこわるいものになってしまう結果になります。一方、モーフィングを使うことができれば立体的に頂点を変更できるので、カメラがぐいぐい変化しても変に見えてしまうことはありません。その分、表情モデルの制作の難易度があがってしまいますが、引き替えに高い表現力を獲得できます。高い映像表現のために演技力はとても大切だと考えていたのでモーフィングによる表情表現を持ち込むことは不可欠だったのです。

 プログラム的に、魔法科LZ では Unity3D というゲームエンジンを使用してゲームを作っています。Unity3D のバージョン 4.2 まではこのモーフィングに対応していませんでした。そのため、PolyMorpherという外部ライブラリを用いて何とかしようとしていたのですが、大きな欠点として「とても遅い」という事がありました。モーフィングには多くの頂点の計算が必要となるためネイティブコードで動作しないプラグインでは限界があったのです。どうしようかと悩んでいたところ、思わぬ幸運が巡ってきました。Unity3D のバージョン 4.3 からモーフィングに対応する BlendShape という機能を搭載するというニュースです!これは!!とおもい、4.3 のベータ版をなんとか試させてもらって、さっそく BlendShape を使用してみたところパフォーマンスは PolyMorpher の10倍程度、つまりモバイルでも全く使用して問題ないレベルでした。BlendShape 対応のため、データはすべて作り直しになってしまうとしても(デザイナーさんごめんなさい…)、乗り換えない選択肢はなかったので BlendShape への乗り換えを決断しました。そうして完成したのが、最終的なモデルになります。

 魔法科LZ のキャラクターモデルは、モーフィングを完全に取り入れたおかげで、彼女たちには閉じたり開けたり出来る「まぶた」があり、その下には自由に視線を動かすことが出来る「瞳」があります。そして自由に変形できる「口」もあります。自然な会話の演技もドンとこいです。当然、立体的にちゃんと穴が開いているので、どこから見ても立体的に破綻することがありません。こうして、非常に高い演技力をもったモデルが完成したのです。この高い演技力は先日公開されたムービーの中でも存分に来ていていますので、ぜひもう一度見ていただければと思います。


 ちなみに魔法科LZ のモデルデータは配布できませんが、 ユニティちゃんという、Unity社が無料で公開&配布しているかわいいキャラクターモデルがあります。ユニティちゃんの顔の作りも BlendShape による非常に似たような構造でしたのでモデリングに興味がある方は参考にされるとよいと思います。今後はきっと、モーフィングによるキャラクター表情表現がきっと一般化していくことになるのではないでしょうか。Unity3D ありがとう!!!

 さて、モデリングと平行して重要だと思ったのがエフェクトです。なんといっても魔法科LZでは、魔法バトルが繰り広げられますから、魔法の演出はとても重要だと考えました。そして、これも知るかぎり最高のものを魔法科LZには持ち込みたいと思ったのです。ただ、残念ながらウチの会社ではこれまで派手なエフェクトが必要とされるようなゲームをあまりつくってこなかったので(^_^;)、それほど自信がある分野ではかったのです。そこで、 BISHAMON という 3Dエフェクトツールを頼ることにしました。幸い、後藤さんという BISHAMON を販売されているマッチロックの方とはゲームジャム等で仲良くなっていたので、すぐに話をして、当時、また発売されていなかった Unity3D のプラグインとして動作する BISHAONを開発初期から特別に提供してもらい、開発を進める事ができました。その結果、魔法科LZ のほとんどのエフェクトはこの BISHAMON で作られているのです。後藤さん、ありがとう!!!

 さて、最高のモデルが完成し、カッコイイエフェクトもバンバン表示されるようになりました。ただ、それだけでは終わりではなかったのです。いよいよ本質的な演出の問題が顔をだしてきたのでした。

 魔法科LZ のバトルシーンでは必殺技を使うと、カードによって全画面を使ったカットインシーンが再生されます。ここが、なんといっても映像表現的な見せ場になるということで「アニメに勝ちたい!」とスタッフの思いが集結した場所になっていきました。しかし、いざ作り始めてみると、これがなかなか難しい。絵コンテではカッコイイと思えたようなカットでも、実際に映像になってみてみるとちょっとイマイチだったり、時間制限もあり、テンポが速過ぎたりとなかなか苦戦することになったのです。ぐぬぬ。そこで、ここでもクオリティアップのために社外にヘルプを求める事にしました。映像演出の専門家である林谷和樹さん、通称「ダニーさん」にカットイン ディレクターとして参加してもらうことにしたのです。さっそく合流後、ダニーさんには絵コンテの段階から、いろいろと相談に乗ってもらい、演出案を練ってもらいました。そして実際に一部、データもいじってもらって、みるみるカットインがかっこよくなっていったのです!そして繰り返して作っていく度に、社内のスタッフも勘所をつかんできたのか、カットインのレベルがみるみる上がっていきました。どんどん新しいカットイン、しかもカッコイイシーンがあがってきていた当初は本当に新作カットを観るのが楽しみでした(^^) 一応、ウチのアニメーターの名誉ために多少フォローをしておくと、初期の段階では仕様的にカメラワークに制限がかかっていたのでカッコイイカメラワークを使えず、演出が難しかったという事もありました。後半、それが取り除かれ、完全に自由になったのも大きかったかと。とはいえ、カットインがここまで超かっこよく仕上がったのは、ダニーさんの協力のおかげでした。ダニーさん、ありがとうございました!!

 こんなかんじで、考えうる最高のモデル、最高のエフェクト、最高の演出を魔法科LZ には、思う存分、注ぎ込めたと思っています。本当に、デザイナーはすばらしい仕事をしてくれました!!!

 みなさん、ぜひとも実機(iPhone か Android)で見てみてくださいね。あ、ムービーとかではなく、ちなみにすべてリアルタムレンダリングなので、出来るだけ性能のよい最近のスマフォがおすすめですヨ。


つづく

2014年8月24日日曜日

魔法科LZ 第3回: Death and Rebirth

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 魔法科高校の劣等生 LOST ZERO (以降、 魔法科LZ)のブログも3回目で、前回のづづきから。

 プレゼンの失敗報告を速報で受け取ったその夜、スクエニの方も含め緊急会議を行いました。そこでプレゼンの結果について詳細な報告を聞いたのです。まず最も問題となった点について話を聞きました。(補足するとプレゼンに我々は参加できないので、スクエニさんのプロデューサーにプレゼンを行ってもらっているのです)で、その結果は・・・

「バトルが何をやっているのかわからない」

 という本質的なメインコンテンツの問題点の指摘でした。ぐぬぬ。

 実はこの点はプロト制作中に社内でも指摘された点でもあったので、それなりに改良を加えていたつもりではあったのですが、ズバリ!その点が改めて指摘されてしまったのでした。

 解説するとこの段階でバトル画面では、画面が大きく2つのレイヤーに分かれていたのです。

  • プレイヤーの操作を受け付けるアイコンなどが並んでいる2Dレイヤー
  • 3Dキャラクターが表示されるバトルシーン 3Dレイヤー

 なぜこういう設計になっていたかという理由から先にはなしますと、この分離のおかげで3Dレイヤー(バトル演出部分)はUI的な制約から解き離れ存分にかっこいい映像表現が可能になるという利点があったのす。このプロトタイプではその利点を鑑みて採用していたのでした。もちろん、それによってプレイヤーが受けるギャップは理解していたので3Dレイヤー側は、映像的なカメラの切り替え演出でプレイヤーに情報を提示し、それをカバーしていたつもりでいました。そう、先述のような問題点がわかっていてもこのシステムを採用し続けてきたのは、ひとえに「3D的なカッコイイ演出を実現する」そのためでした。これはまさに、第2回のブログで話した、新しいソーシャルゲームに通じる答えだと思っていたのです。

 しかし、この結果を鑑みるとそのこだわり自体が間違っていたと判断せざるを得ない状況になってきていたのでした。そもそも「3D = 未来のソーシャルゲーム」と考えていたのは勝手な自分たちの思い込みでした。3D的な演出は「答え」ではなく、「手段」であるべき話だったのです。手段が目的の障害になるのであれば、手段の方を変更するべきなのは自明の理です。そして、このミーティングで大幅なバトルシステム変更の決断をしました。

 変更するためには、現在の問題を正確に理解できなければまた間違いを繰り返してしまいます。漠然とした「何をやっているのかわからない」と指摘された理由の本質をさらに因数分解してみました。その結果が下記の2つの解です。

  1. 操作対象をタッチして操作したいのに、3Dキャラではなくアイコンを押す事
    (理由:プレイヤーは画面で動いているキャラクターを押したい!)
  2. タッチしてから結果が出るまでに時間がかかる事
    (理由:プレイヤーはすぐに反応がほしい)

 その結果が、この2つです。

 1. の仕様によって直感的操作、具体的には、操作対象ではなく、操作したい3Dキャラクターと押すべき2Dアイコンを操作する事を強要されてしまっていました。これはコントローラーで操作するようなコンシューマーのゲームではアリでも、画面を直接タッチするようなスマフォのUIとしては、プレイヤーのストレスになり直感的な操作の阻害になっていたのです。そして、2. はプロトタイプでのバトルシステムの都合だったのですが、押してからすぐに魔法が発動するというわけではなくアイコンのタッチ後、すでに魔法の発動中の敵がいた場合、その終了後、自分の順番を待って発動していたのです。これは、操作とその結果のラグを生み、1. と同様に直感的な操作の阻害になります。この2つの要因が「よくわからないバトル」原因なのだという結論にたどりついたのです。制作者側の我々は、自分たちで作っているという事もあり、この点を知らず知らずのうちに見逃していたのでした。というわけで、どうやらちょっとした変更ではだめで、この問題を解決できる様な新バトルシステムを考案せねばならないという事が判明したのです。

 一方、バトルシステム以外の点、具体的には、バトル中の必殺技のカットイン、キャラクターモデル、そしてコミュニケーションモードは好評だったとのことでそちらは安心しました。

 とはいえ、バトルシステムはこのゲームの中核でありもっとも重要な部分です。これまでも相当な時間をかけて検討を重ねてきたポイントになります。その箇所の変更という難題に直面しながら、さらに開発期間は着実に残り少なくなっていっていったのでした・・・

つづく。

2014年8月23日土曜日

魔法科LZ 第2回: 制約と誓約

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 さて、スタートした魔法科高校の劣等生 LOST ZERO(以降、魔法科LZ)の開発ですが、真っ先にやったことがあります。それはスタッフ全員に原作をしっかり読んで、好きになってもらうことです。これまでいろんな原作付きのゲームを遊んできましたが、すばらしいゲームに仕上がった作品もあれば、残念ながらそうではない作品も多く見てきました。それらの間に何の違いがあるのだろうかと考えると、やはり「原作に愛があるのか、ないのか」につきるように思います。原作付きのゲームを作るためには、まず原作を好きならないことには始まらないと確信していました。そのため、スタッフには原作をキチンと読んでもらい、好きになってもらうとこからスタートしたかったのです。そして、その中には自分も含まれます。スクエニさんから話をもらった段階で、自分も原作を書店で見かけたことはあったものの、読んだことがなかったので、すぐに原作のすべての巻を書店で購入し読みました。それと同時に、会社にも文庫本を並べてとにかく原作に触れてもらうようにするところからスタートしたのを覚えています。

 そして、今回の魔法科LZの案件でスクエニさんからは1つ明確なリクエストがありました。

 「未来(1年先)のソーシャルゲームを作ること」

 これです。リリースは1年以上先になるわけですし、現在のものから進化したソーシャルゲームがみたいということでした。
 では具体的に一年先のソーシャルゲームがどういう風になるだろうかという話から始まるわけなのですが、まずはわかりやすく見た目の話から入りました。当時、すでにソーシャルゲームはネイティブアプリが主流であったものの、まだゲーム専用機と比べると、2世代前程度古い感じで、そして 2Dでの表現が主流でした。これが一年後になれば、もっと3D表現を使うタイトルが普通になってくるだろうということで、それらに先んじて3Dをがっつり使っていこうという話になったのです。これに関しては大賛成でした。ちゃんと魔法科のキャラクターをアニメーションさせようとすると容量的にも3Dの方が効率がよいですし、ウチとしてもこれまでのノウハウが生かせます。そして、ではゲームの内容はというと、これが難題でした。ソーシャルゲームのゲーム要素は非常にシンプルです。しかし、とはいいつつもソーシャルゲームよりある程度はゲーム要素を強化したものにするべきだろうという話にはなったのですが、ではどのくらいまで凝ったものにするのか、どれくらいだとスマフォのプレイヤーさんたちに受け入れられるラインになるのだろうかという点はがなかなか見えなかったからです。

 結果から書くと、この内容に関してのツメは結局、かなり長い期間をかけてトライアンドエラーをくりかし、突き詰めていくことになってしまいました。最初の素案から、ゲーム内容のFIX にいたるまでの間、書いた仕様書は数知れず、作成したプレイアブルなプロトタイプでも相当数存在します。開発序盤はまさにスクラップ&スクラップの毎日がくりかえされたのです・・・

 そんななかで、数ヶ月後にはこれで行けるだろうと仕上げた状態のプロトタイプが完成しました!その段階のアプリの特徴を挙げると

  • 3Dをキャラと背景両方、ふんだんに使用した魔法バトル
  • カメラワークもガンガンかわってバトルをもりあげ
  • 操作もキャラのアイコンにタッチするだけで魔法がばんばん発動
  • 必殺技では超かっこいいカットイン!
  • 戦闘の合間には3Dキャラが表情豊かに話すコミュニケーションモード

 スタッフのみんなもがんばってくれ、やれることをすべて全力で盛り込んだつもりでした。そして、意気揚々とプロトタイプ終了審査のプレゼンに望んだのです・・・

 が、プレゼンはなんと失敗!?再検討を求められてしまいました。
 あえなく玉砕してしまったです・・・ orz

つづく

2014年8月20日水曜日

魔法科LZ 第1回:永遠の夜の中で



 ついに本日、公式サイトが更新されまして、一年以上の期間、全力で制作してきたスマフォアプリ「魔法科高校の劣等生 LOST ZERO」(以降、魔法科LZ)の情報がオープンになってきました。(事前登録も開始されていますのでゼヒ)弊社初のスマフォアプリでのFree to Playソーシャルゲームタイトルでして、完全新作かつ、企画&プログラム&デザインとゲームの大部分を弊社で担当させてもらっています(サーバプログラムはシリアルゲームズさんと一緒にやってます)。この魔法科LZでは、これまでと違う多くのチャレンジを行ってきました。このタイミングで、この制作期間の間に考えたこと、決めたことや、新規に変更したこと等を忘れないうちに書いていこうと思っています。そして、この話、一回ではとても収まりきれないのでシリーズになります。マジです。ちょっと長くなりますが、おつき合いいただければと思います m(_ _)m

あ、タイトルは自分の趣味なので、適当にスルーしてください。
個人的な嗜好で決めちゃってますので(^_^;)



 それは、去年の初夏のある日。社内的には、PS Vita版の「拡散性ミリオンアーサー」がローンチを無事におえ、順調に運営もまわりだしていたのですが、一方で自社オリジナルの「テぺっと」はなかなか成果が上がらず、運営終了を決定し、その次のステップを考えていたタイミングでした。

 そういうタイミングでスクエニさんから、今回のライトノベル「魔法科高校の劣等生」のゲーム化企画の打診をいただいたのです。実はその頃、他の会社さんからも別の受注案件の相談をいただいていたのですが、そのどれも PS Vita の案件でした。これはウチの開発実績を見れば無理もありません。そして現在、コンシューマの開発案件を受けられる開発会社は日々、減少しているという事実があります。理由はいくつかあるのですが、大きなものとしては、スマフォアプリへの転向の結果、で、その後、運営も担当することになり、ずっと開発ラインに空きが出来ないというながれが結構あるのではと思われます。コンシューマ用のゲームを作りたい会社、作れる制作会社の数は変わっていなくても、一度、アプリの運営が始まると結果としてずっとそのラインは離れられなくなり、別案件の受注など不可能になります。そして全体的にスマフォ用のゲームアプリの案件が圧倒的に多いので、いったん、そちらでラインが埋まってしまうと、別のプロジェクトへのアサインはあえてタイミングを計らないとなかなか難しいといわざるを得ないのは、どうしようもない事なのかと思います。かくして、PS Vita の開発案件は一部の開発会社に集まりやすいという流れになってきてしまっています。

 閑話休題。ちょっと話題がずれました。それはさておき、PS Vita の新規案件の受注にはいささか迷うところがあり、話をいただくものの、受注までは至らなかったというのが、まぁ、その段階での結果だったのです。

 そんな中で!この案件である魔法科高校の劣等生の条件は別格でした。
  • 制作予定期間が約一年と十分新作が作れる期間(コンシューマ新作並み)
  • リッチなアプリを制作するに十分な予算(多くのスタッフを投入可能)
  • プロモーション的にも全力プッシュの予定(来春の2クールアニメ化等)
いろんな話をしましたが、ざっくりとまとめるとこんな所です。正直、話を聞いた段階で、この案件を受けない選択肢はないという内容だったのですが、即答はさけ、ちょっとだけ頭を冷やして会社のみんなにも相談して返答したのですが、もちろん開発受注、快諾の返答でした。

 これまで、どちらかというとウチの会社はキツめの制作期間と工数で、なんとか完成させ、その制約の中で成果を上げていくという様な兵法的には奇策的手法を用いるたぐいの開発が主になっていました。一方、今回の案件は戦術的には正攻法の大規模艦隊運営というか、かけられる費用をちゃんとかけて、とれる限りの成果をとってくる事をめざすという、仕事でゲーム開発をしたことがある人なら必ず一度はやってみたい!と思える大規模案件(注:スマフォアプリにしては、です。海外のAAAタイトルとかの予算とは比較にはならないですよ、念のため)の内容だったのです。しかも、プラットフォームはずっとずっと進出したいと思っていたスマフォ(iPhone & Android)です。日本のゲーム市場の主戦場がスマフォアプリに遷移していく様子を横目で見送ってきたのですが、ついにそこに打って出られるチャンスが巡ってきたという訳なのでした。これはもう、やらない手はないですよね。

 最後に、ちょっとだけグチになるのですけど、可能であるなら、このような全力での新作チャレンジはトロやクロたちといっしょにできれば!とずっと思っていたのですね。しかし、残念ながらその願い、今回は叶いませんでした・・・。でもいつかトロクロと一緒にチャレンジしたいと思っています!(SCE さん、ゼヒ)

 とはいえ、それはそれ!これはこれ!!やると決めた以上、魔法科高校の劣等生に全力投球です!!!
 こうして、魔法科LZ(当時はまだこの名前はもちろんありません) はスタートすることになったのでした。

第2回につづく。

2014年8月16日土曜日

ホノルルマラソン 2014を走ります!

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 知り合いのゲーム外社社長さん達にさそわれて、今年の12月にハワイで開催されるホノルルマラソンに参加することになりました!以前、2005年にホノルルマラソンは一度走ったのですが、その時は初めてのフルマラソンということもあり、あまりよいタイムではなかったので今回はしっかりトレーニングして、良い走りができるようにしたいと思う所存。(上の写真はその時とった写真です)そして、ハワイのゲーム会社を見学できるかもしれないとのことで、そちらも楽しみです(^^)

 ただ残念なのはホノルルマラソンに出ることにした為、直前の 11月に開催されるツール・ド・おきなわは、さすがに練習する時間がなくなるので(こっちは自転車)、参加を見送ることにしました。今年の一つの目標でもあったので、ちょっと残念ですがしょうがないですね。こちらは、また来年チャレンジできるようにホノルルマラソン終了後、練習を再開ていきたいところです。

 では、まだまだ暑いですが、マラソン練習がんばりますよ!